男のパパ活 パパ活1年でわかったこと②
桁外れの金をポン!と出す客もいた。戸山さんはそのひとりだ。50万円くらいポン!って感じだった。その戸山さん宅でおれが何していたかと言えば、
25階の天空と呼ばれるだだっ広いベランダで、ジャグジーに浸ったりシャトーローザンセグラを飲んだりしながら美人妻のきれいな形の尻を眺めていただけだった。そんなことに戸山さんは50万円というおれらにしてみれば大金をポン!と、ビールの栓を抜くみたいに払ってくれていたのだ。
その桁外れの金をポン!と出す客の脳みそは、おれたち庶民や凡人に理解できるようなもんでは絶対なく、理解しようと思うことすらおこがましいにも程があるってことも知った。だからおれは戸山さんの言うことを
「なんでも」
聞いたし、「なんでも」した。首を横に振ることは一度もなかった。庶民平民のおれが富裕層の戸山さんにできることといえば「言われたことはなんでもする」以外思いつかなかった。
おれは戸山さんとエッチくらいしてもいいと思っていた。その頃は。おれもまだ全然わかってなかった。
男どうしでエッチするのがどうたらこうたらと言うやつも世の中にはいるだろう。大いに結構だ。おれは言わんがな。おれが驚いたんは、おれの顔や体があれほど好きと言いながら、エッチしたいという性欲を、おれに具体的に生々しく向けてこないというやり方があるということだ。
頭を撫でてくれたり、濡れた体をタオルで拭いてくれたり、そういうことにエッチ以上の価値を感じる彼ら富裕層の脳みそを、今世間でやたら用いられる、意味のよくわかんない言葉のひとつだった「豊かさ」ではないだろうか。豊かさとは、その人が何にどのくらいで満足するか、その創造力のバリエーションのことを言うんだろう。