男のパパ活 月契約のおれの仕事
戸山さん(仮名)に月200万円で買われる契約を承認したおれは俄然やる気が湧いてきた。戸山さんの提示した条件は「月10回のデート」をできるだけ戸山さんのスケジュールに合わせて欲しいというだけだった。そんなの当然のことだ。幸いその時のおれは大学の授業もラグビーの練習も門限のある寮生活も何もなかったから、できない理由など何にもなかった。
コロナのせいもあって、デートのほとんどは戸山さんの25階の自宅だったが、西東京を見渡しながら素っ裸でデッキチェアに転がり、美人妻が運んでくれるカクテルやら外国産ビールを胃に流し込むというのはコロナの喧騒を忘れてしまいそうなくらい静かだった。この時間の価値は一体なんだろう。戸山さんはこの時間の何に大金を支払っているんだろう。デッキチェアに仰向けで寝そべり、スッポンポンの下半身を見ながらおれはそんなことをぼんやり考えていた。
隣に戸山さんがいることもあれば、戸山さんは書斎で仕事をしていることもあった。おれが来ていても仕事をするってどういうこと?と最初は思ったが、
そばにいてくれるだけで幸せなんだ。
と言われ、納得した。おれにもそういう気持ちになれる相手がいるからだ。おれは25階の天空で撮影したたくさんの自撮りを編集してでっかい窓ガラスの向こう側で仕事している戸山さんにラインで送ったりした。
手持ち無沙汰だとついつい右手がアレに触っちまうんだが、おれは自分の手ですることをやめた宣言をした身だったので、ちょっと触っては制止し、ちょっと触っては制止し、みたいな動きを繰り返した。実は男にとってセンズリというのは精子を出すためだけの行為って訳でもないらしいことに気づいた。おれは持ってきた三脚にスマホを装着し、天空でそんなことをしている自分の姿を撮影した。こういうのこそ売れるかもな。などと思いながら。